心理カウンセラー 炭屋由美子

経営者の妻たちの今

日本の企業の割合は中小企業が95%以上だと言われます。

その中小企業の中で、大小はあっても、創業者が祖父や父であったりして、その後継者が息子という形態はたくさん見られるところです。

その中で、経営者の妻たちは、どんな人生があったのでしょうか?

 

私も嫁いだ先が事業経営者の後継者だったので、結婚してからは驚くことの連続でした。

中小企業の社長さん達は本当によく働きます。

一年365日、休日も祭日もなく、お正月も元旦から主要なお取引先へのご挨拶から始まって、新年のゴルフのお付き合いにもよく行ってました。

それが終わると、今度は社員さん達が社長の自宅へ新年の挨拶回りにくるので、家のものは、それのもてなしで、連日、休む間も無く、小正月が終わった頃には、過労で、風邪で寝込むことがよくありました。

 

社長も大変だけど、それを支える家族の者、とりわけ社長夫人という立場の人は、いろんな意味で苦労が絶えなかったと思います。

 

中小企業では、新規に入ってきた社員さん達を、我が子のように大事に大事に育てます。

地方から出てきて寮生活をしている高校や、大学を出たばかりの社員さんを、我が家に連れてきてよく食事をさせたりします。

一度に5、6人連れてくるのは、ザラで、我が家の子供達と合わせると、いつも十何人かの食卓でした。

会社の社訓に、[企業すなわち家族]と謳われているそのままの風景でした!

 

社長にとって社員さんはそのくらい、大事な我が子同様の財産だったのでしょう。

仕事の悩みから、プライベートの悩みまで、真剣に関わっていました。

社内結婚もたくさんあって、仲人をした組も何組もありました。

 

社員を育てることは社長にとって何者にも変えられない喜びだったとおもいます。

 

そういうことがあったとしても、いろんな事情で会社を辞めていく社員さんは、数え切れないほどありました。

雇ってはやめられ、また採用して育てる。

 

それの繰り返しです。

 

そんな時の経営者の心情としては、自分の不甲斐なさに心痛め、打ちひしがれる事になるのです。

毎日毎日、仕事の事、会社の将来のことを考えて、働いても働いてもこれでいいということはなく、 次から次から押し寄せる難問にも必死に食らいついて働く様を、経営者の妻たちは見てきました。

 

社長は毎日必死に働くけれど、時々は、馬鹿みたいに遊ぶ事もしていました。

接待と称して高いお金払ってお酒を飲みはしゃぐ様は、「こんなことしないとやっていられないよー」っていうように見えました。

 

バブルの頃は特にそのように見えました。

 

経営者の妻たちは、必死に働く社長の顔もそのまた裏の顔も見ていたのです。

 

社長の妻は黒子に徹することで、何を守ってきたのでしょうか?

社員さんやお取引相手の前では、社長を支える影の立役者として。夫を取り巻く血縁者の一族の中では、血の繋がらない嫁の立場として、家庭の中では、子供達の母親として。色々な仮面と役割の中で働きバチのようにくるくる走り回っています。

 

会社の発展の為に、夫の役に立つように。

できた嫁だと言われるように。

理解ある妻だと言われるように。

良い母親だと言われるように。

 

社長の妻達は健気にいろんな役割を背負って頑張ってきました。

日本経済は中小企業の社長経営者さんたちが担っているかもしれないが、その経営者さんたちを支えているのは、その妻たちではないでしょうか?

 

時代の変化は日を追って早くなるように感じます。

昭和の時代が懐かしく思う時代となり、平成も早30年が過ぎ、新しい年号もすぐそこになってきています。

団塊の世代も定年を迎える時代になり、昭和に活躍した経営者さんたちも、世代交代の波が直ぐそこまでやってきました。

 

若者たちの間では、昭和はもう古い。価値観も古いと、居酒屋さん辺りで、会社の古株の人たちへの不満を、声高くあげている人がいるのを耳にしたりすることがありましたが、確かに、時代は大きく変わり、価値観も人生観も変わりました。

世代交代のバトンタッチの時期は直ぐそこにきているのですが、昭和の経営者さんたちをずっと見てきた者からしたら、頑張ってきた人達をもっと敬意をを持って観て欲しいなというところです。

頑張ってきた経営者さん達がいたから、豊かな経済国になったんだと思います。

 

急激な経済発展の歪みはあったとしても、あの頃は、あれが正しくて便利で豊かになれば幸せになれると、誰もが信じていたのです。

 

昭和の経営者さんたちは、会社を自分の人生そのものだと思って家庭も自分の人生も、会社あってのものだくらいの気持ちでやってきたのです。

会社が、自分の人生で、家庭の幸せで、生き甲斐だと信じきっていたのです。

だから、妻から、家庭と会社とどっちが大事なの?と言われると、頭が???になるのだと思います。

 

妻達にしてみれば、会社しか頭にない人だから、家庭や子供達は、妻である自分が守るしかないと何処かで、覚悟したのだろうと思います。

 

時代が大きく変わろうとしている今、価値観や幸せ感も変わっている今、妻達は、ふと気づくのです。

 

私は本当の自分を生きてきただろうか?

いつも誰かのために生きてきたんじゃないだろうか?

私は何のために生まれてきたのだろうか?

私が求めている幸せって何だったんだろうか?

 

物質的な豊かさを求めて走り続けてきた時代から、今、本質に還る道を求めている。

 

そんな気がするのです。

 

大きな転換期に立っている。

 

 

あなたは、何を目指して進みたいですか?