心理カウンセラー 炭屋由美子

[女性の社会進出] その本当の意義


最近女性が強くなったとか、男性が優しくなったという話をよく耳にします。

家庭の役割の変化も見逃せません。

少し前の昭和の半ばくらい、そう日本の高度成長期と言われた頃は、お父さんが会社に行って外で働き、お母さんは家庭を守り家事子育てをやる。そんな家庭が一般的でした。

お父さんは、「外にいれば7人の敵」と言われる厳しい社会の中で馬車馬のごとく働くことが当然とされ夜遅くまで働き、日曜日も接待ゴルフなどでほとんど家にいない状態でした。

子育てや家事一切が女性の仕事でした。

男子厨房に入らずと言われ、お父さんが家事を手伝うという発想はあまりなかったと思います。

 

日本が敗戦の復興の中で目覚ましい発展があったのも、男性が家庭を顧みず、仕事に励み続けられた背景には、女性が家庭の一切を任され男は外、女は内、という構造があったから、世界に類を見ない高度成長があったのではないでしょうか。

女性たちは、お父さんのいない家庭をしっかり支え、子育てや家事、年老いた親の介護もまた女性の仕事でした。

お父さんも大変だったけど、お母さんたちは大家族制度の中で、守備範囲も広く、下支え的な役割が強い中で頑張ってきたと思います。

 

高度成長期の中では、消費が美徳と言われ、電化製品もどんどん開発され、郊外の一戸建て住宅に憧れ、男たちはますます働き続けました。

誰もが生活水準を上げることや物質的な豊かさに憧れていました。

女性たちも生活を豊かにするために、子供には、いい大学に入り、いい企業に勤めることがステータスだというように、塾通いの子供が増えていきました。

そのためには、お母さんたちも外に出て働き始めました。

豊かな生活をするためには、お父さんだけではなく、お母さんも外で働かざるを得なかったのです。

 

消費生活が加速する中で、バブルが弾けて、リーマンショックがあり時代は大きく変化して行きました。

家庭の中心にいる女性たちは家庭を守りながらも、外で働くことを選択せざるを得ない状態の中でサバイバルのように生き抜いてきたと思います。

男社会の中で女性が働くことはいろんな意味で生易しいことではなかったと思います。

でも母は強し、の言葉のように力も権威もない女性が、社会で働くことを選んだのには、人それぞれ事情は違うでしょうけれども、家庭を守るため、とりわけ子供の将来のために立ち上がったんだと思います。

女性は子供のためには火の中にでも飛び込むという母性がそうさせたんだと思います。

そうやって社会に出て行った女性たちは何を見ていったでしょうか?

家庭の中の小さな世界では見えなかった男社会の大海の中で、女性たちはどのように活躍していったのでしょうか。

男性の補佐的な仕事から始まり、やがてその質と量は膨らむばかりになります。

女性が外で働くことが一般的になっても、家事も育児も女性の担当という家庭においての役割意識は中々変わらないというのが現状でした。

女性たちの働き方の変化によって様々な葛藤が職場や家庭においてあったと思いますが時代はどんどん変化して行きます。

家庭という小さな世界から飛び出して、社会とつながるということ、これは女性にとってものすごい大きな変化であり、女性の生き方、人生観を変えたと思います。今まで家族のためという生き方から、私という自分を生きる。に主軸が変わったという気がします。

 

女性は社会に出ることで、黒子の役から主役に変わるくらいの人生観の変化が起きたのではないでしょうか?

お父さんが大黒柱で、お母さんはそれを支える人みたいな家庭においての役割意識が大きく変わってきました。

影の実力者はお母さんという家庭もあるのではないでしょうか。

 

子供を産む、子供を持つという選択も女性が強く握っていると思います。

だから結婚観もだいぶ様変わりしてきたのは、女性の選択権が強くなったことも大きいと思います。

女性が安心して働ける社会にならなければ、子供を持つという選択も結婚するという選択も二の足を踏むことを女性たちは続けるのではないでしょうか?

女性が子供を産み育てるということと、社会で働き続けるということが、両立することの困難さをいかに緩和できるかが鍵になるのでしょう。

本来は、子供を産み育てることは人として一番の喜びであり学びであるはずなのに、これを選択するのが困難な社会は未来が閉ざされる思いがするのです。

女性の社会進出の歪みがこういう現象で現れることは非常に残念なことではあります。

でも今の若い子育て世代のあり方を見ていると、そうでもないなあと、思うこともあります。

 

私の住んでいるところは、小さな街ですが、お父さんが子供をおんぶして歩く人が随分見受けられ、また子供の数も三人とか多く見られるようになりました。

子供は社会の宝なので、喜ばしい傾向だと思います。

その子供を産み育てる決断をするのは、女性であり、男性がどこまで女性を理解して支えることができるかが、女性の決断を支えているのだと思います。

女性が子供を妊娠、出産することのハンデも考慮してなお、女性と男性が、同等に社会で関わることができるような働き方ができれば、もっと結婚も出産も増えるのではないだろうかと思います。

 

それが豊かな社会を生み出す源動力になると思います。